世界規模でのビジネスを考えるとき、14億の人口を抱える中国の動向から目を離すことはできない。この国で1つのトレンドを生み出すために、各企業はどんな手法をとっているのか。100万都市が国土に点在する中国で、どんなふうにトレンドが生まれているのかを紹介しよう。
中国の人々はトレンドに興味がない？
景気減速のニュースもチラホラ出始めてはいるものの、消費大国として中国の動向は目が離せないところ。では、そのトレンドをどうつかむかだが、実のところ、中国全土のトレンドを紹介する雑誌やWebサイト、テレビ番組は存在しない。「日経トレンディ」や「トレンディネット」のような、トレンド発信の定番コンテンツはないのだ。
例えば、上海から離れた地域に住む人々は、上海の人気スポットなど知らない。上海に観光に行ったところで、日本人観光客と同じところを巡るしかないわけだ。中国はただでさえ広い国土に100万都市が点在するため、日本のように全国的なトレンドが生まれにくいのだろう。また「他人は他人、自分は自分」という考え方が根付いているので、内陸に暮らす人々が、遠い上海、北京といった沿岸部の都市のトレンドに興味を持つこともない。それどころか、農村部の人々は省都のトレンドにさえも関心を示さないのが現状だ。
パソコン起動時のトピック、広告がトレンドを生む
とはいえ、中国でトレンドが生まれないというわけではない（だからこの連載も存在する）。そのトレンドを生み出しているのがネットを含めた口コミだ。
例えば中国人のコミュニケーションに必須のチャットソフト「QQ」。これをインストールすると、Windowsの起動時にQQが起動し、ホットトピックや広告記事が表示される。またQQほどインストール率は高くないが、人気のIME「捜狗輸入法」やマルチメディアプレーヤー「暴風影音」も、起動時に広告を表示する仕様になっている。それらのトピックや広告を多くの中国ネットユーザーが共有することで、トレンドが生まれることがある。
また「ぐるなび」「ホットペッパー」「食べログ」のような、地域のレストランやショップ、ホテルなどをランキングと口コミで探せるサイトも北京や上海などのネットユーザーに人気が高く、彼らの“新規開拓”に一役買っている。中国人は基本的に記事広告を信用しないのだが、親族や友人、知人の口コミは信じる傾向があるのだ。
中国でトレンドになりやすい広告とは？
中国における消費の中心となっているのは、トレンドに敏感な10代後半から30代のネットユーザーなのは間違いないが、ネットだけが広告合戦の場ではない。
中国の街並みを見れば分かるように、中国には個人経営のショップやレストラン、工場の連絡先を掲載した広告はあるものの、新宿や渋谷といった日本の都会によくあるイメージ広告は見かけない。中国の街中での広告と言えば、建物に掲げられる巨大広告か、バスや地下鉄構内や車内の交通広告ばかりだ。
なお、電脳街やアパレル街のように1つのジャンルに特化した地域の広告は、日系企業のデジカメの広告や、アパレルブランドの広告が中心。対して歩行者天国が目印の繁華街・中心街の広告は、老若男女を問わずあらゆる人が訪れるだけに、掲載された広告がトレンドになりやすい。
また、交通広告も、やはりあらゆる層の人々が利用するため、話題になりやすいようだ。同様の理由から、地下鉄駅構内にも多くの広告スペースが設けられている。
ヒットの鍵は斬新さと強引さ!?
バスや地下鉄の車内に入れば、公共交通専門のテレビ番組が車内にある幾つものディスプレーに表示されている。日本同様、中国でも若者のテレビ離れが進んでいる中で、車内で流れるテレビ番組は、すべての世代が目にする数少ない広告と言える。ちなみに、若者の新聞離れも進んでいるので、テレビや新聞の広告は、中高年向けのものばかりだ。
もちろん、全世代向けの広告すべてが即ヒットにつながるわけではない。例えば、地方都市では病院や薬の広告を嫌と言うほど目にするないし、地場レストラン開業の広告や家電メーカーの安売り広告にも新鮮味はない。
しかし、見たこともないネットの新サービスや、地場にはないセンスの横文字のブランドには目新しい印象を受ける。そういった広告を目にしたとき、筆者は知り合いに聞き込みしたり、ほかの都市での展開、浸透ぶりをチェックしたりして、トレンドになるかを感じ取っている。広告をトレンドに昇華させようとする企業は、中国全土で効果的な広告を展開し、強引なまでの手法で都市住民に認知させているのだ。
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