シニア世代の間でダーツが注目されている。体力よりも必要とされるのは集中力という競技の魅力を、チャレンジ精神旺盛な２人が探った。
探検隊員になったのは、兵庫県芦屋市の一本哲郎さん（７４）と友人の後藤幸子さん（７１）。「全くの初心者」という２人が訪ねたのは、日本ダーツ協会兵庫県支部。会員約１５０人の平均年齢は７０歳といい、神戸市中央区内の練習会場では、白髪交じりの男女が熱心にボードに向かっていた。
■誰でも手軽に
「年齢、性別にかかわらず、誰でも手軽にプレーできるのが特徴です」と基本ルールを説明してくれたのは支部長の松本為由さん（７０）。
得点エリアを示したボードに一定の距離からダーツを投げ合って得点を争う。競技は先端部分が鋼鉄製のダーツを用いる「ハードダーツ」と、プラスチック製の「ソフトダーツ」に大別されるが、手ほどきを受けたのはハードダーツ。ボードの直径は４５・５センチ、ダーツは５０グラム以下、３０・５センチ以内であれば、好みのものを選ぶことができるという。
ボードには「１」から「２０」までの数字が書かれ、シングル部分に矢が刺されば、その数字がスコアになり、ダブルリング部分ならその数字の２倍、トリプルリング部分なら３倍が得点になる。中央部のシングルブルは２５点、ダブルブルは５０点。１回（１スロー）に３本ずつ投げ、合計を得点としていく。
足を少し広げ、ボードから２・３７メートル離れたスローイングラインの後ろに立ち、ダーツの重心付近を指先で持って、ひじが支点になるように腕をまっすぐに引いて反動を使って投げる。「肩の力を抜いて上半身は動かさずに」「紙飛行機を飛ばすような感じで」との松本さんのアドバイスで、おもしろいようにボードに刺さり始めた。
■暗算で頭の体操 デザインや重さもさまざまなダーツ
「さっそく競技をやってみましょう」。まずは、５スローの合計点を競う「カウントアップ」というゲームから。最初に１本ずつ投げ、センターにより近かった一本さんが先攻と決まった。息詰まるプレーが続いたが、「１８」のシングルに加え、「１８」と「４」のトリプルリングに２本を命中させ、１スローから８４点（１８＋１８×３＋４×３）という高得点をマークした後藤さんが最後までリードを続け、圧勝した。
「思い切って真ん中を狙ったら、うまくいった」と喜ぶ後藤さんに、一本さんは「力が入り過ぎて“ハート”を射抜けなかった。恋愛と似てますね」と悔しがった。松本さんは「女性が男性に簡単に勝てるのもおもしろいところです」と言う。
次は、持ち点を得点分だけ減点していき、相手より早く０点にすることを競う「０１（ゼロワン）」ゲームに挑戦。３０１点の持ち点を１５スローまでにちょうど０点にした方が勝ちというルールの説明に、２人は「３本の合計を計算するだけでも大変なのに、それをさらに持ち点から引き算するなんて」と、ダーツの刺さったボードの前で暗算に追われた。試合は７点を残した一本さんが、最後に「７」のシングルに命中させて勝利。
一本さんは「狙い通りに決まると最高の気分。汗もかいたし、頭の体操にもなって老化防止になりそう」と笑顔を見せ、後藤さんも「初心者でもマイペースで楽しめるのがいいですね。機会があればまたやりたい」と話していた。（文・渋谷聖都子、写真・枡田直也）
◇うれしい効用たくさん◇
高齢者の健康維持や認知症予防にも役立つと、生涯スポーツとして人気が高まっているダーツの効用を松本さんの話をもとにまとめた。
〈１〉体力、筋力をさほど使わずに競技ができる
〈２〉集中力が磨かれる
〈３〉指先を使う
〈４〉簡単な加減乗除計算をするので脳の活性化に役立つ
〈５〉家族や仲間で楽しめる
■協会、全国に２８支部
日本ダーツ協会は１９７５年に発足。国内競技会を年間６０回以上開催しているほか、公認指導員の養成や講習会などを開いており、全国に２８支部ある。
兵庫県支部（０７８・８７１・７３１１）は、神戸市内を中心に活動。９月にはシニア選手権の開催を予定している
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