エリック・クラプトンが「マイ・ヒーロー」と称えるスライド・ギターの魔術師、サニー・ランドレスが、4年ぶりのニュー・アルバム『エレメンタル・ジャーニー』を5月23日に発売、5月26日、27日には<ジャパン・ブルース&ソウル・カーニバル>出演のため9年ぶりに来日を果たす。今最も注目すべきギタリスト:サニー・ランドレスの、「ジャンルの壁や既成概念を越えて、極限までクリエイティブになりたかった」と語る『エレメンタル・ジャーニー』への熱い思いを語るインタビューをお届けしよう。
ここには、ニュー・アルバムをより深く楽しむためのヒントや、スーパー・ギタリスト、ジョー・サトリアーニや若きギター・マスター、デレク・トラックスへの想い、来日公演に向けての意気込みなど、貴重な発言が満載だ。
――『エレメンタル・ジャーニー』は、素晴らしいギター・インストゥルメンタル・アルバムで感動しました。今回、なぜインストゥルメンタルのアルバムを作ろうと思ったのでしょうか。
サニー・ランドレス:ずっとやりたかったことだったし、ここ数年は特にこの想いが強くなったから、『遂に作るときが来た』と感じたんだ。
――あなたが編み出した「ビハインド・ザ・スライド」奏法は、インストゥルメンタル曲でこそ、もっと活かせるという気持ちはありましたか?
サニー・ランドレス:そういった気持ちはなかったよ。なぜならビハインド・ザ・スライド奏法は、もう自分の中の一部分になっているし、自然体で出てくるんだ。この奏法がどんな音楽にも相性良くはまることは、ずっと前からわかっていたよ。
――歌いたいという気持ちを抑えるのは大変ではなかったですか?
サニー・ランドレス:全然!少し変に聞こえるかもしれないけど、一度インストゥルメンタル・アルバムを作ろうと思ったら、頭の中ではフレーズを弾く楽器の音しか聞こえなくなるんだ。
――アルバム・タイトルの『エレメンタル・ジャーニー』は、どんな意味を持っているのでしょうか。
サニー・ランドレス:様々な想いを込められるように、このタイトルにしたんだ。私は、共に歩んできた多くの音楽、ミュージシャンたち、大自然、宇宙、すべての事柄に感謝の念を持ち、受け入れることで、様々な「経験」が生まれると思っている。すべてはつながっていて、一緒に「旅」をしているんだ。我々は皆、宇宙の一部である。全てはつながっていて、共に旅をしているんだ。
――ゲストのジョー・サトリアーニとの交流はいつから始まりましたか?彼の2010年のライヴにゲスト出演していましたよね。
サニー・ランドレス:2004年のエリック・クラプトンの<クロスロード・ギター・フェスティバル>で初めて一緒になったんだ。その後すぐにイタリアで再会し、交流が一層深まって、私から「アルバムに参加してほしい」と依頼したんだ。それからずいぶん時間がかかったね。
――ジョーと今回初めて共演した感想を教えてください。彼とは実際にスタジオで共演したのですか?それとも音源をやり取りして制作したのですか?
サニー・ランドレス:まず私はジョーに「ガイア・トライブ」のデモ・ヴァージョンを送ってみて、一緒にやりたいかどうかを打診したんだ。彼が興味を持ってくれたら、デモをもっとちゃんと作りこもうと思ってたんだけど、ジョーに音源を送った4日後に、彼はいきなりギター・ソロの本番テイクを私に送り返してきてくれたよ。私のデモ・ヴァージョンだけをもとに、彼はスタジオに直行して、この素晴らしいトラックをレコーディングしてくれたんだ。逆に、私もこのことでより良い曲に仕上げるインスピレーションが生まれて、新たにストリングスのパートを足したりしたんだ。
――ジョーとあなたは、ジャンル/サウンド/演奏スタイルなど、かなりタイプの異なるギタリストだと思いますが、ジョーのことをどう思いますか?
サニー・ランドレス:彼はとにかく素晴らしいよ、テクニックだけじゃなくてその情熱や思慮深さ、作曲力、プロデュース能力も。彼は「どうやったら素晴らしいギター・アルバムを作れるか」を理解しているし、観客が一生忘れられないライヴ・パフォーマンスをする方法もわかっている。ホントに神がかってるよ。
――あなたと同じく、現在のスライド・ギター・シーンをリードしているデレク・トラックスについてはどう思いますか。
サニー・ランドレス:デレクは、私が世界で一番好きなスライド・ギタリストだ。彼のギターが歌うフレーズは、メロディー・ライン、ビブラートやイントネーションが素晴らしいんだ。彼は完成されたミュージシャンであるにもかかわらず、いつでも冒険心をもっていて、自らの可能性を拡げようとしている。しかも、すごくイイ奴!
――あなたはエリック・クラプトンからも尊敬されるほどのギタリストです。その凄さを、このアルバムでもっと多くの人に知らしめたいという気持ちはありましたか?
サニー・ランドレス:“知らしめたい気持ち”というよりは、“守りに入ってはいけないという強い意志”の方が正確な表現になるかな。自分に正直でいることも心掛けたよ、そうすれば評価は自ずと付いてくると信じているんだ。
――本作が完成した今、ご自分ではこのアルバムをどのように評価しますか?
サニー・ランドレス:これまでのアルバムの中で、最も多彩な色をもった作品であることは確かだし、私がギターでこれほどまでにストーリーを語ったのも初めてのことだよ。
――ブルース/ロック/カントリーなど、様々なジャンルを最高の形でミックスしたものがあなたの音楽だと思いますが、今作ではそれをさらに進化させることに成功していると思います。あなた自身にも、そういう気持ちはありますか?
サニー・ランドレス:成功したと信じたいし、少なくとも私自身はそう思っている。私はこのプロジェクトで、壁という壁を取り払って、作曲、パフォーマンス、レコーディング、全体的な音、すべての要素を発展させたかったんだ。私はこのプロジェクトに一緒に参加してくれた人全員をとても誇りに思っているし、制作過程は実に楽しかったよ。
――その上でお聞きしたいのですが、今作では地元ルイジアナ・ミュージックからの影響が薄れた気がしますが、それはあえて狙ったことなのでしょうか、それとも自然とそうなったのでしょうか。
サニー・ランドレス:狙っていたわけではないよ。結果的にそうなった。私個人の狙いは、全ての制限や、ジャンルの壁、既成概念を越えて、極限までクリエイティブになることだったんだ。我が故郷ルイジアナの音楽が、素晴らしい乗り物のように私たちを未開の地に連れて行ってくれたことに感謝しているよ。
――5月の来日公演を日本のファンはとても楽しみにしています。ライヴはインストゥルメンタル・ナンバー中心になるのでしょうか?あなたのヴォーカルを楽しみにしているファンも大勢います。
サニー・ランドレス:私のヴォーカルを楽しみにしてくれている人に感謝するよ!今回の来日公演ではもちろん歌うし、インストゥルメンタルの曲も演奏するよ。曲は魂を持ち、進化する。その瞬間を演奏したいんだ。
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